「陣内さん!」

ひまわりが叫んだ。

陣内はひまわりの声に気づいていないと言うように振り返らなかった。

その場に、重い沈黙が流れる。

「――すまない…」

先に沈黙を破ったのは、藤堂だった。

3人は藤堂に視線を向けた。

「――藤堂さん…?」

ひまわりが驚いたのも、無理はなかった。

藤堂は、泣いていたからだ。

「――陣内の話…」

呟くように、藤堂が言った。

「――あいつの昔話を聞いてくれるか…?」

こうして、誰かに陣内の昔話を話すのは初めてだった。

けど…陣内が何故愛を知らないのかを、彼女たちに聞いて欲しかった。