まるで、宝石のようだ。

眼下の夜景を見下ろしながら、陣内龍平(ジンナイリュウヘイ)は思った。

夜景はビルの灯りだったり、車のライトだったりとさまざまである。

けど、空はキラキラと輝く地上とは違って真っ黒だった。

真っ黒な空は、まるで塗りつぶされたようだと思った。

(俺の心みたいだな)

そう思いながら、窓ガラスに映る自分へと自嘲気味に笑いかけた。

「飽きないのか?」

その声の主をガラス越しに見ると、藤堂伸一郎(トウドウシンイチロウ)だった。

彼は陣内の秘書で幼なじみだ。

「別に」

声をかけてきた藤堂に陣内は一言だけ返事をした

そう返した陣内に、藤堂は何も言わなかった。