Monsoon Town

その点では、他の女の子と一緒だ。

自分だって女の子だ。

女の子に生まれたからには、そんな恋に憧れるのが当たり前だ。

「あ、急がなきゃ」

カバンに忘れ物がないか確かめると、急ぎ足で玄関へと足を向かわせた。

足に黒いパンプスを履くと、那智は家を出た。


「――ふう、間にあった…」

始業時刻10分前、どうにか会社についたことに那智はホッと胸をなで下ろした。

「おはよう」

会社にきたばかりの彼女に声をかけたのは、事務員の山梨さんだ。

「あ、おはようございます…」

那智は彼女に頭を下げてあいさつを返した。