Monsoon Town

その頃、陣内はロビーのソファーに座って新聞を読んでいた。

「ひまわり、遅いな」

そう呟いて、外に視線を向けたその時だった。

「あら、偶然ですね」

その声に目を向けると、
「綾香か」

目の前に綾香がいた。

柔らかそうな生地の白いワンピースを彼女は身に着けていた。

飾りのように胸元で下がっているのは、琥珀色のレンズのサングラスだった。

「何しにきた?」

陣内が聞くと、
「旅行にきたんです」

綾香は楽しそうに笑いながら陣内の隣に座った。

当たり前のように隣に座られたことに、陣内はイラついた。

「陣内さんは?」

ニッコリと柔らかく微笑みながら綾香が聞いてきた。