小学生の頃から読んでいる少女向けのロマンチックな恋愛小説である。

この文庫本は、那智のお気に入りの恋愛小説だ。

容姿も性格も全て平凡なヒロインが王子様みたいなかっこいい男の子と出会って、恋に落ちると言うストーリーである。

何回も何回も読んだため、今では本を見なくてもスラスラとセリフが言えてしまうほどである。

「本当に、小説みたいな恋がしたいなあ」

ベッドの横に置いてある本棚に視線を向けると、今まで集めたたくさんの恋愛小説たちが中に収まっていた。

恋愛小説ばかりを集める那智を、妹は似合わないとよく苦笑いをしていた。

けど…妹も隠れて恋愛小説を読んでいたことを、那智は知っている。

そんな懐かしい昔の思い出に、那智は笑みがこぼれてしまいそうになった。