――ジリリリリリリッ!

突然鳴り出した目覚まし時計に、現実の世界へと引き戻された。

「――もう、いいところだったのに!」

躰を起こして、目覚まし時計に向かって手を伸ばして止めた。

「――朝か…」

カーテンの隙間から差し込んでくるまぶしい太陽の光に目を細めながら、桃井那智(モモイナチ)は呟くように言った。

ふとベッドの下に視線を向けると、カバーのかかった文庫本があった。

那智はそれを拾いあげると、
「せっかくのいい夢だったのにな…」
と、表紙を見ながら呟いた。

少女マンガのようなかわいらしいイラストが描かれた表紙に、那智の胸がキュンと鳴った。