陣内の頭の中に、あの日の出来事がよみがえった。

優しい人だった。

ずっとずっと、あの人がいつまでもそばにいてくれるものだと思っていた。

「だから、名づけたのか?」

「彼女の名前を決める時に、俺の頭の中に浮かんだ名前――それが、“ひまわり”だった」

細いその髪を指に絡めると、陣内はひまわりを見つめた。

そんな陣内の背中を、藤堂は見つめた。

彼の背中が、あの日の彼の背中と重なった。

あの日、陣内は泣いていた。

いつもは涙を見せない彼が、背中を震わせて泣いていた。

何度も何度も、同じ言葉を言いながら泣いていた。

自分は、そんな彼の背中を見つめることしかできなかった。