その質問に、陣内は答えられないと言うように黙った。

「ひまわりは、お前が大嫌いな花のはずなのに何で名づけた?

他にもたくさん名前はあったはずなのに、どうしてお前は大嫌いなその花を名前にした?」

そう聞いてきた藤堂に、
「――そうだよ」

絞り出したような震えた声で、陣内が言った。

「俺は、ひまわりの花が大嫌いだ。

…あの人が好きだった花だから」

陣内は手を伸ばすと、ひまわりの髪に触れた。

「あの人かと思ったんだ。

ひまわりを見た時、あの人が俺の前に現れたのかと思った」

藤堂は黙って、陣内の話をに耳を傾けていた。

「絹のように細い髪も、陶磁器のような白い肌も、小さな紅い唇も、彼女は持っていた。

あの人が持っていた全てを、ひまわりは持っていた」