陽平は、ほんの一瞬だけ陣内の目に何か映ったように感じた。

少しだけ、彼の瞳が影を潜めたのだ。

「彼女は、仕事上の部下だ。

それ以上でもそれ以下でもない」

「…そうですか」

陽平はアイスコーヒーをすすった。

(この人、何かあるな…)
と、陽平は思った。

彼の目に見えたもの――それは自分の見間違いでなければ、寂しさだったように思える。

「そろそろ、私はここで失礼する」

「…えっ?

ああ、そうですか」

「あんまり遅くなると、藤堂がうるさいからな」

陣内は椅子から腰をあげた。