そう言った藤堂に、
「チッ、藤堂までじいさんの味方か」

陣内はやれやれと息を吐いた。

「俺はどちらの味方につくつもりはない」

続けて言った藤堂に、
「そうやって思ったことを口に出す度胸は認める」
と、陣内は言った。

藤堂は大げさにため息をつくと、
「イエス、でいいんだな?」
と、聞いた。

「勝手にしろ」

陣内はそう言うと、窓の外に視線を向けた。

夏の兆しを見せる日差しがまぶしい。

「――そう言えば、もう夏だな」

呟くように、藤堂は言った。

「――ああ、そうだな…」

窓に視線を向けたまま、陣内が言った。

外を見つめる彼の眼差しに影が見えたのは、あの出来事を思い出したからなのだろうか?

そう思いながら、藤堂は車を走らせた。