「どうしたんですか?」

彩花が首を傾げて聞いてきたので、
「ううん、何でもない」

那智は首を横に振って答えた。

何でもないように答えても、心の中は動揺を隠せなかった。

「桃井先輩、彼氏できたんですか?」

隣にくると、彩花は手を洗い始めた。

「えっ?」

質問の意味がわからなくて、那智は聞き返した。

「桃井先輩の大変身、話題になってましたよ。

男の人からお昼に誘われても断ってたし、もしかしたら彼氏ができたんじゃないかって」

手を洗いながら話す彩花に、何故か那智はギクッとなった。

いや、今はギクッとなるところではない。