用事を済ませて、下りるエレベーターの中で那智は考えた。

あの陣内に、食事に誘われた。

その誘いに自分は返事をしてしまった。

(まさか、ウソが本当になるとは…)

オフィスの男たちの誘いを断るための口実として使っていたことが、本当になった。

(それはまあ、よかったとして)

本題は、陣内が自分を食事に誘ったと言うことである。

突然のことで信じられなかった。

彼からの食事に対して、自分はつい首を縦に振ってうなずいてしまった。

ふと、エレベーターの後ろにある鏡に那智は視線を向けた。

そこにいたのはお局様の自分ではなく、イメージチェンジした自分がいた。

「そもそも何で、変えようと思ったんだっけか…?」

鏡の中の自分に向かって、那智は呟いた。