Monsoon Town

「束ねてた方もよかったけど、下ろした方もこれはこれでそそられるな」

それは一体どう言う意味なのだろうか?

「――あの…私、秘書課の方に用がありますので…」

那智が呟くように言ったら、
「ああ、それは残念だな」

サラリと、髪に触れていた手が離れた。

それが名残惜しく感じたのは、自分の気の迷いだと信じたかった。

「昼休み、何か用事はあるか?」

陣内が聞いてきた。

「…えっ?」

一瞬何を言われたのか、よくわからなかった。

(もしかしなくても、私はこの人に誘われたの…?)

そう思っていたら、
「都合が悪いのか?」

陣内が聞いてきた。

「い、いえ…」

那智は首を横に振って質問に答えた。