Monsoon Town

「…少なくとも、俺のような家庭ではないのは確かなことだろうな」

そう言った陣内の目に、一瞬だけ寂しさが灯ったのは自分の気のせいだろうか?

「両親がちゃんといて…もしかしたら、兄弟姉妹にも恵まれている笑いの絶えない明るくて楽しい家庭で生まれ育ったんじゃないかと思う」

陣内は続けて言った。

あの出来事は、いつまで彼を締めつけるのだろうか?

そして…いつになったら、彼自身を解放してくれるのだろうか?

藤堂がそんなことを思っていたら、
「陣内さーん!」

たくさんの服が入ったカゴを両手に抱えたひまわりが戻ってきた。

「思った以上にたくさん選んできたな…」

あまりの服の量に、藤堂は唖然となった。

「かわいかったから、いっぱい選んできちゃった」

ひまわりがエヘッと笑いながら言った。