ひまわりの作った朝ご飯は、とても美味しかった。

箸を進める陣内を、ひまわりが微笑ましそうに見ていた。

「わたし、ご飯を作ってる時に思ったんです」

ひまわりが言った。

「何を?」

「こうしてご飯を作って、誰かの帰りを楽しみにしながら待っていたなって」

「誰か?」

ひまわりの言葉に、陣内は聞き返した。

「陣内さん、美味しいって言ってくれるかなとか残さずにちゃんと食べてくれるかなとか」

ひまわりは楽しそうに話をしていた。

彼女の唇からこぼれる“誰か”は一体、どんな人物なのだろうか?

名前も知らないその存在に、陣内は思うことしかできなかった。