那智はグラスにビールを注いだ。

つまみの空豆を口に入れると、那智は息を吐いた。

ここは、那智行きつけの居酒屋である。

今日みたいに1人になりたい時は、必ずここを利用する。

都会の隠れ家的な居酒屋なので、知ってる人はほんの一部だろう。

彼らは、今頃は飲み過ぎなくらいに飲んでいるのだろうか?

自分がきていないことに、誰も気づいていないだろう。

「――こう言う時、1人って損よね…」

ポツリと呟いたその一言は、誰にも聞かれることなく消えて行った。


「んじゃーね!」

飲むだけ飲んだ後、おぼつかない足元で居酒屋を後にした。

店員が自分の心配していたが、そんなのはどうでもよかった。