一瞬でも過去に戻ってた自分が悪いのだ。

「返事、待ってもいいです」

そう言った綾香に、
「えっ?」

陣内は聞き返した。

「告白の返事、考えてください」

綾香が笑いながら言った。

「陣内さんの口から答えが出るまで、あたしは待ちます。

ゆっくり考えてください」

陣内は黙って、綾香の話を聞くことしかできなかった。


夜の街は騒がしかった。

「――ゆっくり、か…」

陣内は街を歩きながら、先ほど別れたばかりの綾香の言葉を思い出していた。

タクシーを使わずに家路に帰ろうとしているのは、1人で考えたかったからである。