よみがえりそうになったそれを、藤堂は慌ててかき消した。

(――あいつが愛を知らないのは、全てはあの出来事なんだ…)

そう思うと、チクリと藤堂の胸が痛んだ。

「――龍平には、寂しい思いをさせたと思う」

龍太郎の声に、藤堂は現実に戻った。

「だから、なおさら龍平のそばにいてくれる人間が必要だ。

伸一郎くんや私の他にも」

悲しそうに言った龍太郎に、藤堂は相づちをすることも首を縦に振ってうなずくこともできなかった。

「伸一郎くん」

「…はい」

突然名前を呼ばれたため、返事が遅れてしまった。

「龍平に見合いのことを話してくれないか?」