「じゃあ、始めようか」

「はい」

藤堂が首を縦に振ってうなずいたことを確認すると、
「実は、龍平に見合いさせようと思うんだ」

龍太郎が言った。

「お見合い、ですか?」

そう言った藤堂に龍太郎は首を縦に振ってうなずいた。

「龍平も伸一郎くんと同じ35歳だろ?

仕事も落ち着いてきたし、そろそろ伴侶を迎えた方がいいと思ってね」

「ああ、そうですね」

相づちをしながら、藤堂は複雑な気持ちになっていた。

確かに、年齢的にも陣内はそう言う年頃だ。

いつ妻を迎えてもおかしくない時期ではある。

(けど…)

ふいに、藤堂の頭の中であの記憶がよみがえった。