Monsoon Town

会話は特に交わすことなく、ドライヤーの音だけが部屋に響いていた。

けど、悪くないなと思っている自分がいることに陣内は気づいた。

熱風によって宙を舞う絹糸のように細い黒髪は、乾かせば乾かすほどにサラサラになって行く。

「――何か…」

ポツリと、ひまわりが言った。

「んっ、どうした?」

そう聞いた陣内に、
「――わたし、誰かにこうして髪を乾かしてもらったような気がするんです…」
と、ひまわりが返事をした。

「誰か?」

それは、一体誰のことだろうを言っているのだろうか?

「そんな気がしただけです」

そう言ったひまわりに、
「…そうか」

陣内は返事を返しただけだった。

ひまわりが口に出した“誰か”の存在を、陣内は疑問に感じていた。