Monsoon Town

ベッドに入ったはいいものの、すぐに眠ることができなかった。

明日は、綾香と食事をすることになっている。

その予定があると思ったら、陣内は憂うつで仕方がなかった。

どうせ、単なる社交辞令だ。

社交辞令と割り切ってしまえば、それに越したことはない。

取引先の会社と食事会をするんだと考えれば、たいしたことではない。

「くだらない賭けをしたもんだな、令嬢も」

――あなたはあたしを愛すべきです

見合いの席で言った、綾香の言葉が頭の中に浮かんだ。

「愛すべき、か…」

愛せなくなったその後はどうなる?

自分をどうすると言うのだろうか?

結末は、見えている。

終わりは、わかっている。

その時だった。

「――やめて!」