綾香は大きな目を満足そうに細めると、
「ありがとうございます」
と、お礼を言った。

「それでは陣内さん、あたしはこれで失礼します」

コツコツとヒールの音を立て、綾香がドアの方へと足を向かわせた。

「あ、そうでした」

ドアの前に止まったところで、綾香が思い出したように言った。

「明日の約束、忘れないでくださいね。

18時に『エンペラーホテル』の最上階のレストラン、ですよ」

それだけ言ってニヤリと形のいい唇をあげると、綾香は社長室を後にした。

バタンと、目の前の社長室のドアが閉まった。

「令嬢も令嬢で、一体何だ」

陣内は熱を確認するように、手で額を押さえた。