「夏姫」
名前を呼ばれた。
「華菜」
「良かったね。就職決まって」
華菜は、私が就職が決まったことを知らせると、すごく喜んでくれた。
「うん。華菜もおめでとう。夢への一歩を踏み出したね」
夏姫も華菜が大学に受かったと聞いた時、すごく嬉しかった。
「これからが大変だけどね」
華菜は言った。
「華菜なら大丈夫だよ」
「夏姫も大変だと思うけど、頑張ってよ。なかなか会えないと思うけど、電話とかメールとか毎日しよう」
「うん」
夏姫は大きく頷いた。
「夏姫、柊君のことはもういいの?」
華菜は言った。
「うん。柊も県外に就職決まったみたいだから、もう会うこともないよ」
夏姫は言った。
「後悔しない?」
「・・・・・もういいの。柊には、私よりもきっといい人が現れるから。例えば、未来ちゃんとか」
夏姫は笑った。
「無理に笑わなくていいよ。それに、未来ちゃんと柊君最近一緒にいないし。なんかあったんだと思うよ」
華菜は、私が無理に笑顔を見せていることが分かっていた。
「とにかく、もういいの。柊のことは・・・・もういい」
夏姫は、柊のことを忘れたかった。




何もかも、忘れたかった。




柊と一緒に笑ったことも、泣いたことも、怒ったことも、すべて大切な宝物。




かけがえのない大切な時間だった。





でも、思い出すたびに苦しくなる。




大切な宝物、時間だからこそ、忘れたい






好きだからこそ、さよならする