玄関から外へ出ると、初夏を感じさせる強い陽射しが眩しく感じられた。
後ろ向きになったままのキャップを被り直し歩き出す。
しかし五歩も歩かないうちに声をかけられた。
「日曜にしちゃ早起きだな。万年ネボスケの真琴なのに」
わざとらしく驚いた顔を作ってそこにいるのは倫太郎。
お向かいさんで幼なじみ。
ここに引っ越してきた幼稚園の頃から高校卒業まで一緒に育ったくされ縁の倫太郎。
「あんたこそ、早起きしてバイク磨いてご苦労様ね」
「おう!愛子こそ俺の生き甲斐!」
「は?嫌みで言ったんだけど。って愛子って誰?」
「俺の愛車の愛子だよ~」
倫太郎は愛おしそうにバイクを眺める。
「ネーミングセンスなさ過ぎっ!」
昔からバカだとは思ってたけど、ってか知ってたけど、ほんとにバカだわ。