私だけの王子さま




“相原……?”


「うん……」



どうしよう。

何から話せばいいんだろう?


委員長と話したいって思ってたのに、いざ繋がるとうまく言葉が出てこない。


心臓の音が、バクバクうるさい。


そう思いながらも、緊張で乾いた唇を開こうとした時だった。



“相原……ごめんな。何回も電話くれたみたいなのにかけ直せなくて”


委員長が、申し訳なさそうに言った。

あの時と同じ、落ち着いた声。
それを聞いたとたん、一気に緊張が解けていく私の身体。


「ううん。私の方こそ何度もかけちゃってごめんなさい……。
あの、どうしてもお礼がしたくて」


“お礼?”


「うん、迷惑かけちゃったから」 


“そんな。いいのに気にしなくても”


くすっと笑う委員長から少し離れた所で、誰かが話しているのが聞こえる。


「……委員長、もしかして今忙しい?」


話し声がどんどん大きくなっているのを察して尋ねてみると、一瞬だけ間を空けて委員長が答えた。


“うーん、まぁ少しだけな……”

「そっか……」

“うん……”


私たちの会話は、お互いが何か言う度に、何秒かの沈黙が流れる。


探っているというか何と言うか……。
そんなに話したこともない同士だから当然なのかもしれないけど。


でも、その沈黙は全然嫌ではなかった。


ゆっくりと二人のペースで時間が流れていくようで、逆に安心する。


だから話をしているうちに、あれほど騒がしかった心臓も穏やかにリズムを刻み始めていた。