ふと目線を上げると、雲一つない綺麗な青空が広がっていた。

木々の間から聞こえる蝉の鳴き声と、蒸し暑い空気が、本格的な夏の到来を感じさせる。


その時、一人の男が、爽やかな笑顔で小走りに近づいて来た。
待ち合わせしていた、彼氏のアキラだ。


「柚、お待たせ!!」


走って来たからか、少しだけ息を切らしている。


「ううん、今来たところだよ。
それよりどうしたの?テスト前だって言ってたのに……」


アキラは、大学二年生の19歳。
とある有名大学で経営を学んでいる。


ほとんどの大学では、もうすぐ前期の定期試験が行われる。


アキラも前回のデートの時に、ヤバイって焦っていた。

それなのに。


「なんだよ、テスト前だと会っちゃいけないわけ?」

アキラは少しムッとしている。


せっかく、心配してあげたのに……。


「いや、私は別に構わないけど」


やっぱり、余計なことは言うものじゃない。


「じゃあ、いいじゃん!向こうに車止めてあるから行こうぜ!!」


「えっ!?ちょっ……」


アキラは素早く私の手を掴んで、そのまま歩き出した。