私が一人戸惑っていると、前田君は鉄柵を乗り越え、私の隣にしゃがみ込んだ。

「うへぇっ!たけぇなやっぱ…ここから落ちれば即死だな」

この場に似つかわしくない前田君の態度。そんな前田君の様子を見ていると、私の中にある死にたいと思う気持ちが少しずつブレていく様な気がした…。

「何よ…何なのよ一体っ!何で邪魔するのよ!」

小馬鹿にした様子で私の邪魔をする前田君に私は、非常に頭にきていた。おもわず自分でも驚くぐらい、大きな声を出してしまう。

「しーっ!大声出すと当直の先生が来るからっ」

私は前田君の言葉に急いで口を塞ぎ、前田君も自分の口の前に指を当て、驚いた様子で周りの様子を窺っている。

「………」

途端に静かになった深夜の屋上で、私は死ぬに死ねない状況に置かれてしまう。前田君は相変わらず私の隣でしゃがみ込み、屋上から見える景色に視線を向け、満足そうにタバコを吸っている…。

「…ところで私の何がすごいの?」

先ほどの前田君が私に言った言葉。開口一番に私に向かって前田君は、すごいと言ったのだ。

意味が分からない…。

「あぁ?あれか…あれは単純に、自分で死を選ぶ根性がすごいと思ったんだよ」

死を選ぶ根性がすごい??

「…意味が分からない。一体それの何がすごいのよ…」