何もかも吸い込みそうな夜の闇は、小さな光でさえ綺麗に栄えさせる。

車のライトや家の明かり。そのどれもが夜の闇を引き立たせる至高の存在に見える。

「これが私の最後の景色…」

悪くないと思った。毎日、嫌なものしか見ていない私は、最後の光景がこの綺麗な光景で本当に良かったと思った。

不思議と足も震えない…。

心も落ち着いている。

怖くない。

あの地獄の様な毎日に比べれば、比じゃないくらい怖くない。

覚悟は家を出る前に決めてきた…。

心残りもない…。

ごめんね…親不孝な娘でごめんね。

「自殺するのか?」

覚悟を決め、屋上から飛び降りようとした時、後ろから声が聞こえてきた。

その声に驚いた私は、急いで振り返り、声をかけてきた人の方を向いた。

声をかけてきた人は、学校指定の制服を見事に着崩し、咥えタバコに少しニヤけた表情で私を見ていた。

「…邪魔しないで」

心臓が痛むぐらい驚いた私は、波打つ心臓を手で押さえながら、吐き出すように言葉を言った。