さて、授業中に考えることがまたひとつ増えてしまった。なぜ、おれだけが野球部で大学が決まらないのか。それに、新たにもうひとつ。どうして、おれは喧嘩を止めなかったのか。
 六十分後、倫理の講習が終わった。結局、おれ達二人は野球部のグラウンドに向かうことにした。
 しかし、グラウンドには誰もいなかった。雨は降りそうだが、まだ降っていない。いや、雨で練習中止にはならないはず。
――部室でミーティングをしているのだろうか。
 二人でドアを開けた。部室の中に確かに部員はいた。しかし、ミーティングをしている様子はない。一様に暗い雰囲気だった。
「おい。どした」
 おれが口に出したのとほとんど同時に、おれ達の後を継いだ新主将が一枚の紙をおれの胸につきだした。二人でそれに目をやる。

―処分―
 当日発生した部員の暴行事件により、野球部を活動停止十日間、該当する生徒に関しては一ヶ月の部活動停止処分とする。
生活指導部

「十日後って秋の新人戦の前日……だよな」
「多分な」
 横から相槌を打たれた。顔はあわせない。どんな顔か予測はつく。出来れば、聞きたくない相槌だった。誰かに頭から否定して欲しかった。だが、事実は否定できない。
 ドアが開いた。ちょうつがいが軋む音がした。
「おい。なんでここに引退した生徒がいるんだよ。今から、生活指導部で事情を部員に一人ずつ聞いていくんだよ。はい、外に出る」
「おれ達だって部員です」
「もう三年はやめたんだろ。受験勉強にうちこんでいればいいんだお前らは」
 何かを言おうとした新主将をおれは目で止めた。
――何を言っても無駄だ。