その日の朝も、いつものようにバスに乗る前にコンビ二で夕飯を買う。パンと飲み物を何にしようか。ブドウジュースにしようか。本当は、果実酒というものを飲んでみたいが、いままでは、そんなことしたら、野球部が対外試合禁止になるし、飲むなら今がチャンスだが、飲めない。おれは、意外と自分が気の小さい人間なのだと初めて認識する。
その日の放課後は倫理の講習を俺は取っていた。教室は一年生八クラスの教室の一番奥、通称監禁部屋、演習室と呼ばれている部屋だった。それは、普段、宿題を忘れた人が宿題を終わらせるまでそこから出さないという指導に使われるせいだが、これは講習なので、監禁部屋とここで呼ぶのは不適当だろう。野球部のやつは俺のほかにもう一人、と言っても彼は大学をもう決めているのだが、この講習を受講していた。
「この講習短いし、終わったら野球部顔だすか。今日から新チームの始動だろ。お前にも野球を見て元気つけてもらわないと」
突然、おれは、話をふられた。〝野球部”この言葉聞くのはずいぶん久しぶりな気がした。
「いいよなぁ。おまえ、大学が決まってて……。野球部のことを考える暇なんてないよ」
「まぁ、そんなこと言わない。おれよりいい大学行って下さいよ」
「野球漬けのおれにそんなとこ行けると思うか……?」