卒業式まであと7日。

例年より少し暖かい日々が続き、3中旬にはあたりが桜で埋め尽くされると聞いた。
桜の木には、まだ小さな蕾がしっかり枝についていた。



春うららかな午後。
窓際の席のあたしを、爽やかな風が包む。


「亜美!」

「ん?」


名前を呼ばれて、窓の外を見れば愛しの翔太が、笑顔であたしの顔を見上げていた。


「今日の帰り、バッティングセンター行こう!」


翔太は野球が大好き。
あたしもバッティングとかは、翔太の影響で好きになった。


翔太は、キャプテンで4番。
生徒副会長も務めている。
爽やかで、誰にでも優しくて、俗にいうイケメンで、ハッキリ言って翔太はモテる。

それに比べてあたしは何の取り柄もない。誇れることなんて、一つもない。
でも、あたしは翔太が大好き。
翔太はシャイだから中々気持ちを言ってくれない。それだけが少し不満…。



「分かったあー!迎えに来てね!次、体育ー?!」

「おー!ソフトボール!」

「頑張って!」

「おう!じゃあな」


ソフトボールにわくわくする、単純な翔太が可愛くて自然に笑みが零れる。

グラウンドに走る翔太に手を振りながら、
彼の背中を見つめた。


あぁ、やっぱり翔太が大好きだなって実感する。