寒夜は姿勢を直し、黄泉風に向き直る。
真っ二つになった扇子から、淡い光が点々と浮き上がり、ひとつのかたまりとなった。
「久しぶり、『風の神』」
その光に、寒夜が話しかけた。
『お久しぶりです、『空の心』……』
光からくぐもった声が返ってきた。
『この前、雨美に憑いたばかりだったのですがねぇ……』
「うん、ごめん」
『責めている訳では……ただ、私の能力で四神を殺ったとなると、私の立場がありませんから……』
黄泉風に向けて、皮肉のように言うと、光が少しずつ弱くなっていく。
『では、そろそろ他の人に憑かなくては、“陰”が来てしまいますね……ああ、その前に……雨美』
呆然としていた黄泉風は、はっとして顔を上げた。
『……短い間だったけど、ありがとう』
その言葉を最後に、光は完全に消えていった。
