翌日の放課後、俺は由綺をあの桜の木の下に呼び出した。 「どうしたの、急に。 昨日、祐一のことずっと待ってたのに、先に帰っちゃってたでしょう?」 単純に疑問に思った。 そんな感じだった。 よく言うよな。 由綺の声だけを聞くと、昨日のことが全部夢だったかのように思えてくる。 『フッ。 待ってた? 俺を? お前、俺が何も知らないとでも思ってるのか?』 けっして怒鳴ってはいない。 けれど、底冷えのするような冷たい声だった。