11月の中ごろ。
部活が早く終わったため、まだ教室に残っている由綺を呼びに校舎に戻った。
由綺のクラスの目の前まで来たとき、ドアの小さな窓から信じがたい光景が目に入ってきた。
由綺が知らない男に抱かれている。
どうして……?
もめている感じはしない。
由綺はその男の胸に顔を埋め、腕をまわしてシャツの背中をぎゅっとつかんでいる。
男は由綺を愛おしげに見つめ、右手で頭を撫でている。
そのとき俺は由綺が抵抗することもなく、男の腕に抱かれていたということに頭がいっぱいで由綺が震えていたことに気づかなかった。
俺はどうすることもできずに黙って教室に背を向けた。