「行ってきまーす」
「信也っ。お弁当!!」
私は慌てて廊下を走って玄関まで急ぐ。
そこにはスーツ姿の信也がいた。
「・・・はいっ」
そういって私はお弁当を差し出す。
「お、ありがとね。いつも悪いね。」
「ううん!これくらい全然!」
私はお弁当を受け取るときの信也の笑顔が好きだ。
「じゃ、行ってきます。愛奈も学校頑張ってね。」
「うんっ!行ってらっしゃい!」
・・・カチャ。
・・・パタン。
「ふう・・・」
信也がいなくなった家の中はやっぱり少し広い。
「準備しよーっと。」
私、森山愛奈は高校2年生。
社会人2年目の堀口信也と二人で暮らしてます。
二人暮らしといっても
やむを得ない事情があるのです。
私が高校1年生だったころ
私には両親が二人ともいなくて
食事と寝床を与えてくれる男を捕まえる毎日を送っていた。
ひどいときには公園のベンチで眠ったりもした。
私の周りは不幸に満ちていた。
この先に幸せなんてものは絶対ない
そんなもの信じない。
そう固く誓った。
そんなとき
「どうしたの?こんなところで・・・」
唯一声をかけてくれたのが
信也だった。

