妄想小説(短編)

「これはですね、この日・・去年の4月
 3日にこの色紙を買いまして、

 どうせそのうち鈴木杏樹さんに渡す
 予定のサインであれば、今書いておい
 てもいいじゃないか、ということで
 その日に書きました。

 日付を入れておいたのは、渡したとき
 に杏樹さんが日付のことを疑問に
 思われれば、それをきっかけに話が
 できるなあという・・

 だからまあ、いま杏樹さんがこのこと
 を聞いてくださるのは狙い通りという
 わけで、

 おっと、こんなことペラペラ言わない
 方がよかったですかね。ネタばらし
 ちゃって(笑)」

そうなのだ! 僕は何か「仕掛け」を
したときは、引っ掛けた相手に向かって
つい我慢できずに、その場でペラペラと
ネタをばらしてしまう傾向がある(笑)

これでときどき、相手にムッとされたり
することがないわけではないのだが、

今回もそれをやってしまった。果たして
鈴木杏樹さんはどう思われたであろう
か・・僕はやや心配して杏樹さんの表情
をうかがってみた。