妄想小説(短編)

相変わらずニコニコしながら、しかし
ちょっと怪訝そうな顔で、鈴木杏樹さん
は僕の目を見た。

「日付が去年ですね? 2010年
 4月3日土曜日。もしかしてこの日に
 書かれたのですか?」

おお! 思えばこの会談が始まって以来、
ずっと僕は鈴木杏樹さんの手のひらで
転がされてきたが(それが心地よくも
あったが)、

これは初めて鈴木杏樹さんの想定を
外れた事態だったのかもしれない?

確かに不思議である。今年は2011年
であるのに、今日渡される色紙に
2010年4月3日(土)と書かれて
あるのは、どういう理由であろうか?

僕は、仏教的にいうと「鈴木如来」、
キリスト教的にいうと「大天使アンジュ
エル」(←なんだそれ?笑)

であるところの偉大なるお方、鈴木
杏樹さんの興味を引けたことを大いに
喜んで、勢いよくこの件の説明に入った。