蜘蛛ノ糸


「5時」

「マジか! やっちまった〜……なあ、明日ノート貸して」

「うんっ!!」


これで明日も繋がりを持っていられると思うと、嬉しさを押さえられなくて。

待ってましたとばかりに満面の笑みで頷いたら、


「何でそんなに嬉しそうなんだよ?」


と首を傾げられたので、


「良いでしょ、嬉しいんだもん」


と、ありのままを言った。


「はァ? だから何が?」

「内緒〜!」


なんだよ、と口をへの字にした市川が、ようやく立ち上がって伸びをした。


「あーあ、学校サボっちゃっちまったし、さっさと帰るかな……ていうか、お前絵本返した?」

「うん、さっき」

「そっか、良かったな。これで終わったじゃん。一件落着」

「……うん」


喜びをあらわにする市川の笑顔を、私は直視できなかった。


『これで終わったじゃん』


その言葉が胸に突き刺さって痛みを覚える。


『終わった』と言われると、私たちの不思議な関係が終わって、
ただの友達に成り下がってしまうように思えたからだ。



2人で図書館を出た時、市川が沈んでいた私を振り返って、声をかけてくれた。


「どうしたんだよ?」

「別に。何か寂しくなっただけ」

「変なヤツ。さっきまで喜んでたくせに今度は落ち込んでんのかよ」

「だってさぁ……」


市川は声に出して笑うと、自転車にまたがって言った。