蜘蛛ノ糸


「送ってやるよ。向こうに行った方が仲間もいるし、淋しくないぜ、きっと」


魄がゆっくり頷いたのを確認してから、市川は魄の胸に掌を当てた。


すっと目を閉じて、小声で何かを祈り続けている。

もしかしたらお経だったかもしれない。

それを呟いているうちに、魄を形成していたモヤモヤが解き放たれていき、やがて霧のように跡形もなく消えていったのだった。


市川は手を下ろすと、細いため息をついて私に近づいてくる。


「これで、ゆっくり眠れるだろ」

「そうだね……。市川、本当にありがと」

「いいって。それじゃ明日、本返しに行けよな」


言いながら腕時計を見てアクビをもらす。

いつもに増してダルそうだ。


「やっべ、もう2時かよ。俺も帰って寝るわ。じゃあな」

「うん、おやすみ」


手を振り合った瞬間、じわじわと周囲が光に包まれて何も見えなくなり、そのまま私も意識を手放した。






*7*



「アケル〜! いつまで寝てるのー!」


母の声がした。

気のせいじゃない、確かにそうだった。


起きてみると、ここはいつもの私の部屋。

昨日、膝を抱えてうたた寝したにも関わらず、今朝はちゃんとベッドに横たわっていて、しかもタオルケットまでかかっていた。

見兼ねた母か、あるいは父がやってくれたに違いない。