蜘蛛ノ糸




*6*




夜になり、私はベッドの上で例の絵本と対峙していた。

机の上でカチ、カチ、と規則正しく刻む時計は、23時50分を差していた。

両親は廊下を挟んだ向こう側の寝室で眠っている。

カーテンを少し開けたら近所の明かりが消えていくのが見えた。

他の皆は明日のことを考えながら、安心して眠っていくのだろう。

私には“明日”はやって来ないかもしれないのに……。



市川の指示どおり窓の鍵を開けて、ベッドに座り直す。


不意にアクビが漏れた。

瞬きの度にまぶたが重くなっていく。

眠っちゃいけない。

眠ったら最期、魄の餌食だ。

分かっていても、最近ろくに眠れていない。

それが祟ったのだろう、私はとうとう目を閉じてしまった。










──気が付けば、森の中。


体を起こすと、男の子の姿をした魄がそこにいた。


「きゃっ!」


座り込んだまま、手足をバタバタして後ろに下がる。


「どうして逃げるの? お姉さん、ぼくを助けてくれるんでしょ?」


ゆっくり歩み寄ってくる魄。

魄から逃げようと後退りする私。

しかしまた、あの黒い壁にぶつかって逃げ場を失った。


(どうしてこんな所に壁なんか──!)


苦虫を噛み潰して前に向き直った瞬間、鼻先に男の子の青白い顔があった。


「お姉さん、お願い。ぼくとここにいて? 淋しいんだよ」


グッ!!!!


ものすごい早さで私の額を鷲掴みにして、壁に押さえつけてきた。

黒い壁に当たっている後頭部が痛い。