蜘蛛ノ糸


目隠しのように巻かれた包帯を外した時、奇妙なことが起きた。


「──見える」


そう。見えたのだ。

不安をあらわにした医者と看護師の顔が──。


市川は驚き、そして喜んだ。

しかしもっと驚いたのは医者の方だ。

市川の目はダメージも大きく、どこを調べても視力はないはずの目なのに、視力検査の結果は正反対。

両目とも、3.0。

怪我する前以上の回復ぶりだった。



 * * * * * * 



「──確信したのはその後。退院した日の夜、体のあちこち痛痒くなって……掻きむしってたら……割れたんだ、手の平が……」

「割れ……た……?」

「言葉通り、パックリな。それで、何が出たと思う?」

「……分かんない」


そう答えたら市川は、後ろにいる私を振り返らずに、左の手の平を見せてきた。

男の子らしい骨張った大きな手。

その真ん中には、横一直線に大きな傷痕がついていた。


「……眼だよ。これが開いて眼が出たんだ。額と両手の平、両肩と背中、それと両目。全部で8個──」

「うそ──」

「それから霊を扱えるようになったんだ。呪われたのか、それとも生まれつき化け物だからなのか……分かんねーけど、意味があって神か仏が仕向けたのかも。だから天命だと思って従うだけだ」