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キンコンカンコーン──



授業開始のチャイムが鳴った時、私は大慌てで昇降口に駆け込んだばかりだった。

生徒たちは既に席についているのだろう。辺りはしんとしていて、ほとんど物音がしない。

その静けさが、更に私を急かしていた。


下履きを脱いでロッカーを開けた瞬間、思わず「げっ!!」と片眉をひそめる。


(そういえば夏休み中に上履きを持ち帰ったんだった)


とりあえず来客用のスリッパを床に投げ捨てるように置くと、蹴るように足を滑り込ませ、階段を駆け上がった。


(休み明け早々遅刻だなんて……!!)


2階にたどり着いた時、一度足を止めて呼吸を整えた。
真っ直ぐな廊下を静かに歩いていき『1‐B』の入口で立ち止まる。

窓からこっそり覗いてみると、やっぱり授業中は始まっていた。


でも、その教室にいる生徒たちは皆、知らない顔ばかりだった。


遅刻してきた上に、クラスまで間違えてしまったのか──と思ったけれど、確かにここは私のクラスだ。

夏休みが長かったからといって、自分のクラスまで間違えるほど私も間抜けじゃない。

でも、一応他のクラスを覗いた時には、さすがに焦らずにはいられなかった。

なぜなら、どこのクラスにも、私が知っているクラスメイトの顔が無かったからだ。

驚きと不安が一度にやってきて、心臓がバクバクする。

まさか、そんな……、ううん、やっぱり間違えているのだろう。
そもそも、私は高校1年生じゃなかった……かもしれない。