「呪われてるんだ、俺」
その言葉に私は息をのむ。
車道の信号が青に変わって、沈黙を裂くように車が走りだした。
呪いって……
誰が? 何のために……?
「いつからなのか知らないけど、俺の中に化け物が棲み憑いてる。
気付いたのは中学が終わる頃──」
* * * * * * *
「おい、ちゃんと押さえてろよ」
「分かってるって」
机を踏み台にしている市川と、それを支える友人は、廊下の掲示板にポスターを貼りつけているところだった。
「担任のヤロー、雑務押しつけやがって」
画鋲(ガビョウ)を刺し込んでいる市川の目の前に、つう、と1匹の蜘蛛が降りてきた。
それも、500円玉くらいの大きさの。
その蜘蛛はさらに下へ降りていき、机を支えている友人の頭に着地した。
「あっ、頭に──」
「え? ──わッ!?」
蜘蛛が友人の目の上を這うと、彼はパニックに陥って激しく暴れ──
ドンッ!
と机にぶつかった。
その後は、スローモーションのようだった。
衝撃でバランスを崩すと同時に、ケースに入った大量の画鋲を舞い上げてしまう。
市川が机から転倒した直後、驚き見開いた瞳の中に、それらの画鋲は雹(ひょう)のように降り注いだのだった。
すぐに病院で手当てをしてもらい、尽くせるだけの手を尽くしてもらった。
だが、視力は期待できないと言われた。


