狭し人の成れの果て、か……。
もしかしたら私も、市川に出会えていなかったら、こんな風になっていたかもしれないんだ。
そう思ったら他人事には思えなくて、切なくてたまらなかった。
「この魄を解放してあげることできないの?」
「前も言ったけど、死人は俺の仕事じゃない」
「でも、できるんでしょ? 仕事じゃなかったら救ってあげられるんだよね!?」
「俺だっていろいろあんだよ。面倒を持ち込むな」
パタン、と閉じた絵本と一緒にノートを押しつけられる。
「ノート、ありがとな。その本、元の場所に返しとけよ」
市川はそのまま幼児コーナーから出ていってしまった。
私も追いかけようとして、大慌てで靴を履く。
それから本棚に絵本を戻そうとしたけれど、半分しまいかけたところで思い止まった。
──脳裏にちらついた、男の子の笑顔──
本を読んであげた時、すごく喜んでたな……
なんだか独りぼっちにするの、気が引ける……
でも借りたりしたら、市川に怒られるだろうな……
急いで図書館を出たら、もう空は赤みがかっていた。
駐輪場に行くと、自転車にまたがってケータイをいじっている市川がいた。


