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「今までどこに行ってたの!? 誰も何も知らないって言うし! 心配したじゃない!」


病院のラウンジで、私は市川を問いただした。


──市川は、交通事故で“狭し人”になった私を救う手助けをした後、
パッタリ姿を消したのだ。

必死に彼を探して、やっと見つけたのだから、尋問くらい受けてもらわない訳にはいかない。


「そう目くじら立てんなよ。ほら」


缶ジュース(それもオレンジジュースだ)を押しつけられる。

子供じゃあるまいし、こんな物で落ち着くはずもないけど、少し冷静になろうと自分に言い聞かせた。


一人イライラしている私をみて、市川は頬笑んだ。


「俺を捜し当てたのには驚いたけどな」

「ここに来る時、段々腕が熱くなって、……私の腕に何したの!?」

「はァ? 何もしてねーよ」

「え!? だって市川に近付くほど──」

「とにかく俺は何もしてない。もし何か感じたってんなら、それは“霊感”ってヤツだよ」


霊の存在を感じる力というやつ……?


「狭し人になって生死の境をさまよってたんだ、霊応体質になってたって不思議じゃない」

「そうなんだ……私てっきり……」


何か禍々しい呪いでも付けられたのかと思った。


「で、俺に何の用?」

「え!?」

「用事があるから俺を探してたんだろ?」

「何の用って……別に……」


片想いしている相手に言われたら、すごく胸が痛む。

『好きだから会いたかったの!』って、正直に言えたらいいのに……。