「なぁ、タカ毎朝こんなに早く起きてんの?」
授業中眠くならね?と斎藤は続けた。
「普通だろ。ほとんど毎日遅刻してくる奴とはちげーんだよ」
僕は明らかに嫌みたらしいことを言ってやった。
「てかタカって呼ぶのやめろよ。僕は久遠隆哉だ。久遠でいいだろ」


そうだ。僕の名前は久遠隆哉(クドウタカヤ)。
たしかに親しい友人は皆タカと呼ぶが、だからと言ってこいつが呼ぶのはおかしい。
僕は親しい仲になった覚えはない。


「それ普通逆だろ。お前が俺を准って呼べばいいんじゃん。俺は斎藤准だ」


斎藤准(サイトウジュン)。たしかにそんな名前だったかな。
ずっと「斎藤」だったから下の名前なんて忘れていた。
実際誰かにそう呼ばれているのを聞いたことがないのも事実だ。