―が。


母ちゃんの手書きの地図に、どうやら間違いがあったそうだ。


「ったく…何やってんだよ、母ちゃん…。」



足を止め、あたりを見渡す。


しかし、人影はない。


(たしか、バス停のあたりに民家があったはず。)


日も暮れてきたので、荷物を持ち直し、歩幅を大きくする。



すると、森のほうから歌声が聞こえてきた。



澄んだその声に引き寄せられるように、俺はそちらに足を向けた。