「結衣ってさ、なんでうちの美大に来たの?俺、未だに聞いてないんだけど」





恵比寿駅までの道のりを
結衣と肩を並べて歩いていく。




「やだなぁ、今さら聞いてどうするの?」

「みんな知りたがってるよ。なんでうちの大学に来たのか」



俺がそう尋ねると
彼女はクスクスと、何かからかっているかのように俺を見て笑った。




「知りたがってるだなんて、変な人たちね」


「なんで笑うんだよ。それは俺も変人ってこと?俺だって知りたいのに」


「知らなくてもいいじゃない」


「いや、でも…」



すると彼女は、突然立ち止まって、俺の手首をぎゅっと掴んだ。

そして、意地悪そうに微笑む。





「それじゃあ、みんなに言っておいてくれる?凛太朗にしか教えないって」




結衣は、背伸びをして
キスをした。



オレンジ色の街頭に、照らされて。