結衣が、抱えているもの。



それは一体何なのか俺には分からないし、小坂だって分からないだろう。


だけど小坂は何かを悟っている。




俺は結衣の恋人として、彼女がダークな“何か”を抱えているのなら共有したいと思うし、傷ついているのなら、その傷を癒してあげたいとも思う。



俺には、よく分からないのだ。



だから俺は、結衣に問いただすことしかできない。


退学の理由を、抱えている何かを、そして本当に絵を描くことを諦めてしまったのか、ということを。





巨匠・秋元夕清の娘。


そんな重苦しい、世界からのプレッシャーを幼い頃から結衣は受け止めてきた。



元はと言えば、なぜニューヨークの名門校から東京の二流校へ編入してきたのかも謎なんだから、俺が知っている結衣はごく一部。


そんな結衣が受け止めてきた世界からの注目を、半ば彼女は裏切ったのだ。






やっぱり俺には、分からない。