そのとき、また店の奥から出てきた真理子さんが私の名前を呼んだ。
「愛ちゃん」
「は、はいっ!」
びくついた体と共に跳ねた心臓が、真理子さんの笑顔にドキドキとする。
マイナスな思考しか今は頭にない。
しかし、真理子さんのとびきりの笑顔はその考えを覆した。
「愛ちゃん、あなたがこんなにも素晴らしい美容師だなんて正直思ってもいなかったわ」
「……えっ?」
真理子さんは、私の肩を軽く叩いて、それからハサミを手渡した。
「これね、いつか自分の店を開いたときに素敵な美容師を雇えたら、プレゼントしようと思って特注していたハサミなの」
そう語る真理子さんから受け取ったハサミは、ずっしりと重く、光沢のあるシルバーの刃はとてもなめらかだ。

